中学生の頃、従兄に連れていってもらったこの映画「トップガン」。トム・クルーズの出世作である。メグ・ライアンもチョイ役で出ている。
ヒロイン役のケリー・マクギリスはきれいだった。トム・クルーズ演じるマーヴェリックは上官の彼女と恋仲になる。
上司の女性とのラヴアフェア。そういえばア・フュー・グッドメンでもヒロインのデミ・ムーアはトム・クルーズの上官だった。そういうはまり役だったのであろう。男にとって憧れのシチュエーションだとでもいうのだろうか。まぁわからぬでもない。
それはさておきトップガンである。海軍エリートパイロットの映画であるからして、戦闘機がガンガン飛んで、ミサイル発射。中学生男子にとってドーパミンが脳に満ちあふれるような映画であった。
音楽もまたいいのだ。ケニー・ロギンスの Danger Zone, ラリー・グリーンの Through the fire, 深夜のベストヒットUSAでも観たりしてた。
個人的にグレーな色合いの時代ではあったのだが、その映像記憶は色鮮やかである。たぶん楽しかったのだろう。
※Larry Greene "Through the Fire"
時は過ぎて大学4年の春、僕は会計学のゼミに所属していて、よし一丁、公認会計士試験でも受けて通って、会計士として生きていこう、と心に決めた頃である。
仙台のアパートでぼんやりしていたところ、某航空会社の採用担当者から電話があった。
「パイロットになりませんか?」
よみがえるトップガンの記憶、空を疾駆する航空機、上官とのロマンス。僕は即答した。「なりましょう」
ではとりあえず試験を受けてください、と航空会社。仙台で行われた筆記試験は普通に通った。次は面接と心理検査である。交通費、宿泊費の支給を受けて羽田へ向かった。
空港のラウンジから飛行機の離発着を眺めながら、僕は思った。来年からここが俺の職場か。
そんな感慨にふけりつつ、仙台に帰った。
しかしその後、待てど暮らせど航空会社からの連絡はなかった。さようなら僕のトップガン。
一瞬見た春の夜の夢の如き思い出である。
本日は私の愛する酒見賢一氏の誕生日だそうである。めでたい。ワインをあけた。
酒見賢一氏に興味を持たれたならば、「陋巷に在り」は Must Read である。
一部、引用する。
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「残る法は松(しょう)を生かす為に顔穆(ぼく)がおとりとなることである。
(未熟者に老手が死をもって教えるというのも)
これも一種の伝統をなしている。
(尼丘に帰りたかったのだが・・・。仕方があるまい)」 (※陋巷に在り3 媚の巻 より)
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しかし、顔穆が身を挺して逃がそうとした松は、敵手にあっさりと殺されてしまう。穆も死ぬ。
子蓉の中に、恋したひとの面影を見た穆は、切り裂かれながらも安らかな表情を浮かべて死ぬ。
子蓉は、顔穆にとって、ある意味、運命の女だったのではないか。
仏語にあるファム ファタール。これは「運命の女」を意味することばであると同時に、「男を破滅に導く女」をも意味する。媚(び)女とはこれではなかろうか。
なるほど美女は媚女に通ずる。古代に存した媚女に呪された男たちは、少なからず悦びとともに死んでいったのかもしれない。
媚力を持つ女に激しく魅了された男は、ときに喜んで破滅する。
男には生来、そんな性情あるいは欲望が潜んでいるのではないか。
そんな想像に僕はひとり戦慄する。
人ならざる存在の声が聞こえる、という女性を知っている。
おかしな人ではない。むしろ人間的に深みのある人物で、本も何冊か出されている。個性的だが僕の好きなタイプでもある。
数年前のある集まりの後、(珍しく)彼女(Kさんとしよう)から話しかけられた。
K「庄司さん、上の方からね、これから株価が上がるぞっていう声を聞いたのよ」
きけば、人ならざる存在からの声は全身にハッキリと聞こえるものらしい。しかも教師を自認しているらしく、けっこうスパルタだという。
僕「へー、そんなことまで教えてくれるんですか。うらやましいですね」
K「けどね、どの会社の株が上がるかまでは教えてくれないのよ」
何を買っとけばいいのかしら〜?と訊かれるのでおかしくて笑ってしまった。
僕「さぁ・・・ご自身がよく理解できている会社(の株)が一番いいと思いますが」
K「経済のこととか詳しくないのよ」
僕「だったらインデックス・ファンドでいいんじゃないですか(笑)」
せっかくの貴重な(というかユニークな)情報である。なのにごく当たり前のアドバイスしかできないことに我ながら可笑しいな、と思ったことを憶えている。
驚いたことにその後、株価は本当に急騰したのだ。
これは、インサイダー情報ならぬアウトサイダー情報とでもいおうか。人間世界の外からの情報である。
インサイダー取引禁止の立法趣旨からすれば微妙だが、もちろん規制対象ではない。
そもそも、そういう存在って本当にいるのか?しかもそんな俗なことまで教えてくれるのか?と、好奇心をそそられた。
しかし、現実世界の知識がないことには、そういう常識外の情報も活かすことはできないものなんだなぁとも思った。
いずれにせよ、僕のアドバイスに従ってインデックス・ファンドに投資していたとしたら、そこそこのリターンが得られたはずである(実際株価は上がったのだから)。しかし、その後彼女からそういう話は聞いていない。
インサイダー情報(違法)もアウトサイダー情報(微妙)も得られない私たちが、株価上昇のタイミングを事前に知ることは極めて困難(というかほとんど不可能)である。
しかしタイミングを逃さない、という戦略ならとることは可能だ。すなわち市場に居続けることである。
僕はインサイダー情報にもアウトサイダー情報にも興味はない。ただ長い目で見て投資先企業の価値を見極めようと努力しつつ、市場に居続けることを好む。
僕が中学生の頃、町に初めてレンタルビデオ店ができた。
その店は、わが家から自転車で30分ほどの場所にあった。初めて借りたのはターミネーターである。
当時のレンタル料金はかなり高かった(入会金に千円くらい、1泊2日でさらに千円くらいだったと記憶している)。中学生の僕には厳しい価格帯である。それでも借りて観てみたい。結局、当日レンタルとした。
借りるのに店まで往復1時間、観て2時間、そして返却のため再び店へ。さらに往復1時間。なんという時間的豊かさか。旧き良き日の思い出である。
さて、ターミネーターの世界では世界が荒廃するきっかけとなった「審判の日」が昨日、2011年4月21日であった(そういう設定だった)。
たしかに放射性物質とか降ってきてはいたが(日本)。核ミサイルでなくてほんとうに良かった。
イースターエッグ的な企画でした