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弱虫泣き虫諸葛孔明/酒見賢一著/文藝春秋/2,000円(税込)

(注)投資には直接関係しない本ですが、ばへっとが好きな作家さんなのでご紹介してます。
堪能した。
久方ぶりに手にした酒見賢一の本。
バブル真っ盛りの頃に手にした「後宮小説」(日本ファンタジーノベル大賞受賞作)に衝撃を受けたのがそもそものはじまり。
この冬、秋葉原の書店で見かけて思わず手に取った。
その文章力に、いま改めて魅了された。
文章を目で追うごとに、恍惚感を覚える。脳内麻薬がどばどば出ているのだ、たぶん。
それにしてもこの本、タイトルからして挑戦的。
天才だが、どこまでもとらえどころのない一風(というかかなり)変わった人物として描かれる、諸葛孔明。
そして彼を取り巻く数々の英雄たち。
いわずもがなの(無責任なお調子者)劉備。
(冷静沈着、マイペースな殺戮マシーン)関羽。
(酒乱の野獣将軍)張飛。
孔明の身内も魅力的だ。
孔明がただひとり、頭の上がらぬ姉(名は出てこない)。
孔明にどこまでも振り回される弟、諸葛均(しょかつきん)。
孔明の師、?徳(ほうとく)公。孔明に勝るとも劣らぬ個性派。偏屈で頑固者。
師なのだがしかし、ともすると孔明にはペースを乱されてしまう。
正直、三国志は読んだことないのだが、ページを繰るごとにアタマが甘美な喜びにふるえる。
なんと味わい深い文章を書く人物なのかこの人は。
小説の中では、孔明が劉備たちから三顧の礼を受けて出廬(しゅつろ:隠遁していた人が、再び世間で活動すること(広辞苑))
するまでが描かれている。
だから、孔明の軍事面、政治面の活躍は描かれていない。それ以前の時代が舞台。
これだけでも十分に堪能できるのだが、劉備の参謀として数々の奇計を操る姿もぜひ見てみたい、読んでみたい。
続編の世に出ることを心より願うものなり。
ばへっと
Jan. 3, 2004
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