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特製!会社分析レポート 08

4314 ダヴィンチ・アドバイザーズ 編 (2005.9.9 作成)


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【レポート本文 (文字情報のみ)】
< 目  次 >

ビジネスの理解
会社の勢いを読み解く 〜主要な経営指標等の推移〜
もっと詳しく財務分析
筆頭株主・経営トップの声を聴く
株価の割安度を評価する



ビジネスの理解

投資をするのなら、その会社がいったいどんなビジネスを手がけているのか、その本質を
掴むことが肝心です。

優れたアドバイザーを雇うのも結構なのですが、理想はやはり、投資家本人が投資対象を
深く理解しておくことです。

有価証券報告書を読めば、なかなか詳細な情報が載っているものです。

さまざまな角度から、本質を掴もうと意図しつつ、会社そのものを眺めてみましょう。
きっと、あなたなりの会社像が、立体的に浮かび上がってくるはずです。


この会社(ダヴィンチ・アドバイザーズ)が行うメイン・ビジネスは、「不動産投資顧問事業」です。
その内容は、さらにこまかく3つに分けられます。
ざっと見ていきましょう。

<ファンド・マネジメント>
不動産投資ファンドを組成します。会社が行うビジネスのすべてはここから始まるといって
いいでしょう。
ちなみに、会社は、国内の不動産投資会社としては過去最大規模の「1兆円ファンド」を
設立する予定とのこと。(2005/09/02 日経)

<アセット・マネジメント>
信託受益権を設定した不動産を各ファンドに組み込みます。
建物のリニューアルプランや家賃の見直し、テナント誘致プランの実施を通じて、不動産としての
価値を高めていくのだとか。
ファンドごとに、ノンリコースローン(特定の事業に対する融資であり、返済原資をその事業から
得られる収益に限定するタイプの融資)を用いて資金を調達、投資効率アップを図るとのこと。
事業の目的は、投資家より手数料(フィー)収入を得ることですよ。

<コ・インベストメント>
会社は各ファンドに対して全投資額の3%〜15%部分を自己投資しています。
ファンド群を運営する立場である会社が、他の投資家たちと同様の立場で各ファンドの
管理・運営に当たっているんですね。

運用担当者が、出資者と運命共同体になるという意味で、その誠実性をアピールし、信頼度を
高める効果も期待できるのでしょう。

ところでこのスタイル、欧米ではすでに定着している商慣習のひとつなのだとか。

会社は、そのビジネス・スキームを有価証券報告書に記載してくれています。
全体像の把握・理解のために有用と思われますので、抜粋して載せておきますね。

<会社の事業系統図>


(平成16年12月期有価証券報告書より抜粋)

ちなみにH17年6月末現在の会社が運用する資産は2,898億円(投資済みベース)。
運用資産残高が増えたことにより、アセットマネジメント・フィーが増加し、かつ、ファンドの
運用成績好調により、インセンティブ・フィーもアップしているとのこと。


ところで、会社は不動産投資顧問ビジネス以外の投資事業も行っています。
たとえば、不良債権売買による投資収益を目的として匿名組合への出資や、株式投資を
通じての自己運用。

H17年度は、主に不良債権投資における債権の回収益が計上されており、前年同期比、
大幅な増収増益を果たしているもよう。


会社の勢いを読み解く 〜主要な経営指標等の推移〜

個人的に ばへっと は、まずここを見て、その会社がさらなる詳細調査に値するか否かを
判断します。
有価証券報告書の冒頭に記載されている「主要な経営指標等の推移」。
重要な指標がコンパクトにまとめられているので、いつも重宝するのです。

たとえば、こんな情報が載ってたりします。

(省略)

上の表をビジュアルにグラフで表現すると、こんな感じですよ。

(省略)

気になる点を箇条書きにすると、こんなところでしょうか。

● 売上高は前期比ほぼ2倍。
● ROEは期を追うごとに上昇傾向。直近年度は29%。(スゴイな〜)
● 売上高当期純利益率も事業の規模拡大に伴って順調に上昇傾向。
● 毎期堅実に利益を上げているのは好感。
● 直近年度の「営業活動によるキャッシュ・フロー(CF)」は△47億円と大幅なマイナス。なぜ?
● H14/12期に巨額の投資CFマイナスが計上されているのはなぜ?

とりあえず、こんなところが会社分析を行っていく取っかかりになるのではないかと。
この線で、さらに詳しく見ていくことにしますよ。


もっと詳しく財務分析

会社は主に、どんな資産を持っているのかな?ということで、H17年6月末現在の
連結貸借対照表(連結B/S)を眺めてみました。

すると、資産総額240億円のうち、「現金及び預金」が51億円と、コレが最大。

次いで、「その他の関係会社有価証券」が36億円。

証券取引法改正の関係で、投資事業有限責任組合などへの出資を、これまでの
「関係会社匿名組合出資金」から「その他の関係会社有価証券」として表示科目を
変えています(前年度末から)。

だから前中間期末に比べると、大きく増加しているように見えるけれど、実質的には
さほど大きな変動はないことが分かりますね。(前期末に比べれば、残高はむしろ減少
しているくらいですし)

続いて信託販売用不動産が32億円、そして販売用不動産が29億円。

ところでキャッシュ・フロー計算書を見るに、H17年度上半期は、信託販売用不動産の
取得に32億円、販売用不動産の取得に29億円をかけていることが見てとれます。
これがそのままB/Sに載っているというわけ。

負債の部を眺めてみれば、主な負債は短期借入金77億円と長期借入金39億円です。

ところで、資金の調達形態とその運用形態のバランスを測るのに便利なのが、流動比率と
固定長期適合率。
個人的には、好んでこれらの指標を会社分析に用いたりしています。

この会社の「流動比率(=流動資産/流動負債)」は、124%。
そして、「固定長期適合率(=固定資産/(自己資本+固定負債))」は、78%。

短期的な資金繰りといった視点で見ても、取り立てて厳しいという状況にはなく、また、
長期の資産はきちんと長期の借入や自己資本で賄われていることから、財務のバランス的には、
良好といってよいのではないかしら。

経営者の、バランスの取れた経営感覚が透けて見えるかのような感触を覚えましたよ。

さて、肝心の「自己資本比率(=自己資本/総資本)」は35.6%。
まあ、こんなものでしょう。直観的にいって、まあバランスの取れた割合なのではないかと。(エラそう)

ちなみに、過去の趨勢を眺めるに、この会社の自己資本比率は低下傾向にあります。

(省略)

かといって、損失がかさんでの結果などではありません。毎期きちんと、しかもしっかり利益を
計上している点は非常に立派(ROEも直近年度は28.9%と高水準を維持)。

これは、若い会社であることと、よりレバレッジを効かせて積極的に事業を推し進めた結果として、
そんな風になっているのだととらえるのが妥当と考えます。


ところで、会社が行っている事業は、「不動産投資顧問事業」と「投資事業」、そして
「その他の事業」の3つに大別されます。

それぞれの事業内容をカンタンに表現すると、こんな感じですよ。

(省略)

で、それぞれの売上高・営業利益を時系列に並べてみました。

(省略)

上記の表をビジュアルに表現すると、こんな感じです。

旗艦ビジネスであるところの「不動産投資顧問事業」が、売上高・利益の大部分を
占めていることが分かります。

H15/12期からH16/12期にかけて、その売上高は2倍以上になりました。

その理由は、運用資産残高と運用を受託した資本額が増加したことに伴って、
アセットマネジメント・フィーが増収となったことと、価値を高めて収益性を安定化させた
不動産をファンドへ売却し、キャピタル・ゲインを得たことが原因とのこと。

H17年度に入ってからも、運用資産残高および運用受託資本額の増加は続き、
アセットマネジメント・フィーは増加傾向。同時に、過去に組成したファンドの運用成績が
好調であったことから、インセンティブ・フィーも得て、さらなる成長を果たしているもよう。

そして注目すべきは、急激な成長と同時に、その高い水準の売上高営業利益率を維持
しているという点。正直、スゴイ。勢いがありますね〜。

ところで、これだけの業績を上げている会社なのに、従業員数はわずか38名
(しかも連結ベースで)と、まさに少数精鋭!


<キャッシュ・フロー>

さて、H17/12期の中間連結キャッシュ・フロー計算書を見てみると、前年度(△47億円)も、
今中間期(△22億円)も営業CFは大幅なマイナスであることが分かります。

それはなぜ?ということで、その計算過程を眺めてみると、今中間期は、「信託販売用不動産の
取得による支出」が△32億円と「販売用不動産の取得による支出」が△29億円、これらが
大きいのだということが見て取れます。

また前年度は、「その他の関係会社有価証券の払い込みによる支出」が△91億円が
飛びぬけて大きなマイナス要因となっていますね。

いずれも営業活動、すなわち本業のビジネスにかかわる支出ということで、営業CFは大幅な
マイナスとなっているというわけ。

いわば積極的な事業展開の結果として、営業CFはマイナスとなっていると見るのが妥当でしょう。
業績不振などを理由とするものではないので、そこはとりあえず、安心していいと思いますよ。

ちなみにH14/12期の大きな投資CFのマイナスは、「不動産信託受益権の取得による支出」
△97億円が大きい(過去のキャッシュ・フロー計算書を見てみました)。今と変わらぬ
積極的投資姿勢の現れと見てよいのではないかと。


<監査報告書を読み解く>

決算書の適正表示・信頼度をある程度以上の水準に維持するためにこそ、監査は行われます。
監査人とは、いわば資本市場の健全な運営を監視する番人的存在といえます。

この会社の監査を担当しているのはあずさ監査法人。

有価証券報告書に添付されている監査報告書を眺めてみると、その内容は適正意見ということで、
問題ナシということなのだけれども、その中に「追記情報」の文字が見えます。

これは一般的にいっても、見逃してはならない重要情報ですよ。

なぜなら、ときに監査人は、監査報告書に記載される「追記情報」を通じて、私たち投資家に
対して「警告」を発する場合が少なくないからです。

一瞬、「おやおや」と思って眺めた監査報告書の「追記情報」なんですけれども、その内容は
「連結子会社の範囲の変更」と「貸付金による自己投資の持分損益及び貸付金の受取利息
並びに借入金の支払利息の会計方針の変更」についてものであることが見て取れました。

ところで、会計方針の変更イコール問題なのではありません。

そもそも監査報告書には、正当な理由による会計方針の変更が行われた場合であっても、
その旨を「追記情報」として記載することが求められているのです。

正当な理由はあるのだけれども、利益の数値はそれなりに変動するわけで、その影響額を
正しく把握してこそ、会社の収益性とその変遷を深く理解できるわけですからね。

ちなみに今回の「連結子会社の範囲の変更」は、一部子会社の連結グループ全体に与える
影響度・重要性が低いため、決算実務の効率性を優先した結果のものと見ていいでしょう。

そして「会計方針の変更」とは、ファンドに対する自己投資部分の持分損益と、ファンドに対する
貸付金にかかる受取利息を「営業外収益」から「売上高」に計上区分を変えた点です。

理由は、会社がH16/12期に貸金業登録を行ったこと&経営成績をより適切に開示しようと
するものだとか。
それに伴って、借入金利息を従来の「営業外費用」から「売上原価(資金原価)」に計上区分を
変更させてもいます。
これは、受取利息が売上高に計上されることに伴って、費用と収益を対応させなくっちゃあ
ならないね、という会計の基本原則に基づく判断によるもの。

これらの結果、会計方針を変更しなかった場合と比べて、決算書上は売上総利益(粗利益)と
営業利益はそれぞれ同額の289百万円増加していることになります。

ただし、収益・費用の計上区分が変わっただけなので、経常利益に与える影響額はゼロ。

これらの変更による影響額というものは、時系列比較をする場合、頭に入れておくべき数字ですよ。


筆頭株主・経営トップの声を聴く

さて、会社の筆頭株主は、代表取締役社長でもある金子修氏(持分割合27.4%)です。

筆頭株主と経営トップを兼ねる金子氏は、昭和22年生まれ。
その経歴を見ますに、パシフィック・トレーディング社、長谷川工務店(現長谷工コーポレーション)
(USA), Inc.での勤務を経て、平成10年8月、ダヴィンチ・アドバイザーズ株式会社を設立するに
至っているとのこと。

ところで代取社長・金子氏は、インタビューに応じて、国内不動産市場について、次のような
見解を述べています。参考までに、載せておきますね。

「今の東京の投資環境は素晴らしい。これからますます収益が上がりやすい環境になっていく」

「東京では、収益性不動産の利回りが5%を超えるのに対し、資金調達として主流の
ノンリコース・ローン(非遡及型融資)の資金コストは2%と低く、高い運用利回りが期待できる
環境にある」

「この状態は、今後5,6年続き、その間に国内不動産ファンド市場の規模は公募と私募を
合わせて現在の5兆円程度から米国の市場規模の半分程度の60兆円程度に大幅に拡大する」
(August 11 2005/Bloomberg)


さらに有価証券報告書には、経営者が認識する「課題」というべきものが記載されたりも
しています。その内容をカンタンにまとめますと、こんな感じかな。

● 会社は設立以来、少数精鋭主義を貫いてきており、今後もこの方針に変わりはないこと
● エクイティ及びファンドの規模をそれぞれ倍増する方針を決定したこと
● 会社グループがH17年度に計画しているREIT上場のための運用法人および今後の
海外不動産ファンド組成のために、30名程度の増員が必要であると考えていること


ところで、会社は、今後も一株当たり利益(EPS: Earnings Per Share)重視の経営を実践して
いくこと、よって今後も配当を行わず、内部留保を継続していく方針であることを明記して
くれています。いいんじゃないですかね。


株価の割安度を評価する

さて、気になる株価は、2005年9月8日の終値で348,000円。
PER(株価収益率)は、日経金融新聞算出ベースで34.4倍。

決して「圧倒的に安い水準」とはいえないけれど、この株価を高いととらえるか、
安いととらえるかは投資家個々人の目利き力・洞察力・リスクテイクの方針によるところが
大きいのです。

よって、特にコメントはありません。

少なくとも市場は、この会社を高く評価していると見て間違いないでしょうね。

ただ、過去の実績と、そして現段階の財務のバランスを見る限りにおいて、これは要注目の
良い会社だな、と思いました。

不動産投資は ばへっと も大いに気になるところです。

今回のレポートもボリュームいっぱいになりましたけれど、いつも一番の勉強になっている
のは、ばへっと 本人だったりします。

最後まで読んでくれて、どうもありがとう!

では、次回の特製!会社分析レポートでお目にかかりましょう。

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ばへっと でした。


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