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【レポート本文 (文字情報のみ)】
ばへっと特製!会社分析レポート 第7弾 2337 アセット・マネジャーズ株式会社
こんにちは。楽しい投資研究所のばへっとです。
お待たせしました。 楽しい投資研究所がお送りする会社分析レポート、「アセット・マネジャーズ株式会社編」を お届けします。
ひじょーに、難産でした。今回も。 分析予告を出した手前、やっぱりやめました、ともいえません。(笑) で、そのまま会計士業界の繁忙期に突入です。
というわけで、このレポートの大部分は、出張先のホテルと、移動中の新幹線の中で 執筆しました。
うーん、我ながらがんばってるなぁ。
何はともあれ、好きだからこそ、やれてます。 よろしくハッピー・リーディング!
<分析の前提> 分析の前提として、とにかく現状把握が大事と考えます。
各種利益率の算出と、それらの意味するところを理解することです。 そして事業の種類別に収益性を見て、事業の柱を理解します。 また、現時点の財政状態すなわち会社の台所事情を理解します。 とにもかくにも理解です。 投資は対象の理解が重要です。 深いレベルでの理解があってこそ、合理的な投資の意思決定ができるというものだからです。
一般に公開された資料、誰でもいつでも利用できる資料の中にこそ、真に重要な情報が あると、私は思います。
これらの情報に基づき、会社の真実の姿に近づくことを、投資で成功するための第一歩と 考えるのです。 真実の姿とはすなわち会社の本質的・本源的な価値です。 自分の目と頭とハートを通じて、その価値を測定し、投資先としての魅力の程度を測るのです。
今回の対象企業、はアセット・マネジャーズ株式会社です。
使用した資料は、主に決算短信となりました。 というのも、直近の決算期である平成17年2月期の有価証券報告書(有報)は、 まだ公開されていないからです。
たぶん、6月に入る頃にはEDINET(エディネット)で見ることができるんじゃないかな? その代わり、早期に開示される決算資料の決算短信を会社のHPからダウンロードして 手に入れました。
ついでに、前期の有報データをEDINETで閲覧します。
決算短信は会社のHPからPDFファイルで手に入れることができるのですけれど、 有報のデータはアップされていないんですよね。
お願いだからアップしといておくれよ、ってな気分でした。 EDINETは見るのがつかれるんですよね、ホントに・・・
それと、決算説明用の資料が会社のHPにあったので、これも読んでみました。 会社のイメージをつかむための、補足的情報として、なかなか興味深い情報でしたヨ。
<グレアムのことば> まず、バフェットの師匠、ベン・グレアムのことばを紹介しますね。
「最終的に、マーケットは本来の価値にあった価格を付ける」
つまり、株価はいずれ、会社の本質的価値に収束するということです。 グレアム自身、なぜそうなるかの理由は明確に述べていません。 ただ、経験則として、このことは確信を持っていえるのだというのです。
<会社分析> ではさっそく、会社の実績、直近5期の業績推移から眺めてみましょう。 こんな感じです。
(注)グラフはPDFファイル・バージョンに記載しています。
|
(単独)
|
(単独)
|
(単独)
|
(連結)
|
(連結)
|
|
H13/2
|
H14/2
|
H15/2
|
H16/2
|
H17/2
|
売上高
|
107,752
|
399,232
|
1,668,372
|
3,194,922
|
7,744,364
|
経常利益
|
8,002
|
142,273
|
438,105
|
1,337,312
|
3,915,775
|
純利益
|
4,444
|
80,088
|
244,810
|
727,394
|
2,397,909
|
営業CF
|
(50,089)
|
87,284
|
336,515
|
(115,780)
|
(10,442,329)
|
投資CF
|
(64,080)
|
(108,121)
|
(679,452)
|
(100,725)
|
(458,494)
|
財務CF
|
388,880
|
100,000
|
851,663
|
3,053,828
|
17,728,307
|
ROE
|
2.0%
|
13.3%
|
17.1%
|
23.4%
|
25.7%
|
経常利益率
|
7.4%
|
35.6%
|
26.3%
|
41.9%
|
50.6%
|
純利益率
|
4.1%
|
20.1%
|
14.7%
|
22.8%
|
31.0%
|
成長著しい会社です。 まるでタケノコ……いやいや、こんな会社はそうそうないですよ。 注目されるというのも分かりますね。 私だって気になります。こんな業績を見せつけられたら。
ちなみにこの情報は、有報本文の冒頭に記されています。 投資を考えるなら、要チェックの部分ですよ。
続いて事業の種類別に収益性を見てみます。
会社を理解するには、展開する事業の内容を把握しないといけません。 会社が営むビジネスをありありとイメージすることが大切なんです。
ところで、フィデリティのマゼラン・ファンドで圧倒的な運用成績を残した、生ける伝説の ファンドマネジャー、ピーター・リンチはこんなやり方を個人投資家に勧めています。
つまり、画用紙にクレヨンで、興味を持った会社のビジネスを描いてみるのです。
◆
会社はいかにして利益を出しているのか? ◆
儲けを生み出す仕組みはどんなものなのか?
それを小さな子供を相手に5分で説明するのです。 それができれば、あなたの理解がこなれている証拠といえます。 どうぞお試しあれ。
さて、当のアセットマネジャーズ、手がける事業はなかなか複雑です。 とりあえず売上高と粗利益の構成を概観してみましょう。こんな感じです。
<売上高構成>
(単位:百万円)
|
H16/2期
|
H17/2期
|
不動産ファンド事業
|
1,841
|
5,007
|
M&A事業
|
519
|
892
|
不動産事業
|
560
|
305
|
H&W事業
|
262
|
1,506
|
その他の事業
|
10
|
32
|
(注)グラフはPDFファイル・バージョンに記載しています。
<粗利益構成>
(単位:百万円)
|
H16/2期
|
H17/2期
|
不動産ファンド事業
|
1,566
|
4,913
|
M&A事業
|
577
|
855
|
不動産事業
|
265
|
148
|
H&W事業
|
68
|
1,012
|
その他の事業
|
0
|
13
|
(注)グラフはPDFファイル・バージョンに記載しています。
一目瞭然、中核となるビジネスは不動産ファンド事業です。 すべての事業を紹介するには紙面が足りませんので、ここでは不動産ファンド事業に 注目して、ビジネスを見ていきますね。
<コア・ビジネス〜不動産ファンド事業〜> とにもかくにも会社のコア・ビジネス、不動産ファンド事業です。 不動産ファンド事業が収益の柱。 全体のうち、売上は65%、粗利益は71%を占めています。
会社は複数の投資家に対し、不動産を用いて、それをある種の金融商品として、 提供しているんです。
(同時に、これらの投資家に対して、不動産投資に関するアドバイスも、事業として 行っているとのこと)
ところで、会社が行うファンド業務は大きく3つに分けられます。
@
不動産ファンドアレンジメント まずは「不動産ファンドアレンジメント」。 投資対象である不動産を、信託受益権が設定できる物件にアレンジします。 つまりちょっと問題のある不動産をキレイにして売却するというもの。 売却先は主に、会社がリードする不動産ファンドです。
A
ファンドマネジメント(アセットマネジメントを含む) 次にファンドマネジメント。 運用資産の選定、ノンリコースローンなどの導入による利回りの向上を図るように 計画を策定。
運用資産の選定に際しては、債権・債務者からの情報取得を通じて、一般に流出している 物件とは異なるルートで良質の物件を取得、優良かつ収益力ある物件を厳選し、 相対価格交渉、権利調整を経て物件を取得しているとのこと。
会社は、競合他社が避けたがるような、権利関係に問題のある物件の取り扱いを得意 としているのだとか。
権利関係をキレイにして、「修繕・テナントリーシングを実施、取得後3ヶ月を目処に最善の 状態へバリューアップを図る技術」が強みなんだそうです。
B
投資(エクイティ出資) 最後にエクイティ出資。 会社が組成するファンドに会社自ら出資もしているのです。
会社は不動産ファンドのストラクチャーの一例を図示してくれています。こんな感じ。
(注)図はPDFファイル・バージョンに記載しています。
<トピック> ところで、H17年2月期は、新規のファンド組成にかかる手数料収入や、ファンド資産 売却に伴う成功報酬が増えたのだそうです。
また、ファンドからの配当が収益に寄与したとのこと。 ちなみに会社のファンド出資残高は、期末日現在約24億円と、前期末に比べて2倍近く にまで急増しているんですね。
(他のビジネスについても、有報や決算短信にはなかなか詳しく紹介されています。 投資を考える方はご一読あれ!)
会社が展開するビジネスを理解できなければ、その会社に投資するのは賢明な行動とは なりえません。
まあ100%理解するのは困難としても、せめてメインビジネスは、ピーター・リンチの 「クレヨン基準」で理解しておくべきことだと思いますよ。
<経営理念> ところで会社の経営理念も紹介されていました。
「ファンド運用と資産流動化の専門集団として、独自のノウハウとネットワークを駆使する ことにより、不動産を中心とした投資マーケットの健全なる成長に貢献する」
会社が目標とする経営指標は、経常利益率と自己資本比率とのこと。
「売上高、経常利益とも毎期50%程度の成長を達成するとともに、両比率50%以上の 維持を当面の目標としている」のだそうです。
「げぇっ!」
と、思わずうめきたくなるほど強気ですね・・・。 経営者の意気込みというかなんというか、気合が伝わってくるようです。
<大株主> さて、次は会社を実質的に支配する大株主を見てみましょう。
筆頭株主は代表取締役社長の古川令治氏。27.3%の持分を保有。
経営トップであり、かつ4分の1超の持分を有するオーナーでもある古川令治氏が なんといっても中核の人。
「役員の状況」に、彼のプロフィールが載っています。
昭和29年生まれの、現在51歳。 22歳のときに日本長期信用銀行入行。
42歳で、株式会社加ト吉へ出向。翌年、同社の取締役に就任。
45歳、コーリヤーズエムエフ株式会社(米不動産会社コーリヤーズエムエフ社の日本拠点) の取締役に就任。
46歳、コーリヤーズ・アドバイザーズ株式会社をMBO(マネジメント・バイ・アウト)、 そして代表取締役就任。
同年、商号を変更し、(旧)アセットマネジャーズ社となる。
翌年、旧アセットマネジャーズ社(消滅)社とピーアイテクノロジー社(存続)が合併、 現在のアセットマネジャーズ社となるに至る。
ところで、役員の方々を見渡してみると、長銀出身者が多いんですね。 ただし、経営陣の持株状況はというと、社長が筆頭株主であることを除けば、 それほど高くはありません。
社長である古川氏の圧倒的なリーダーシップが透けて見えてくるようです。 そもそも会社経営は社長次第でほとんど決まるといいますしね。
さて、直近3期の損益情報をグラフで表現してみました。こんな感じです。
(単位:千円)
|
(単独)
|
(連結)
|
(連結)
|
|
H15/2
|
H16/2
|
H17/2
|
売上高
|
1,668,372
|
3,194,922
|
7,744,364
|
粗利益
|
846,297
|
2,455,185
|
6,943,887
|
営業利益
|
476,721
|
1,446,443
|
4,269,670
|
経常利益
|
438,105
|
1,337,312
|
3,915,775
|
純利益
|
244,810
|
727,394
|
2,397,909
|
粗利率
|
50.7%
|
76.8%
|
89.7%
|
営業利益率
|
28.6%
|
45.3%
|
55.1%
|
経常利益率
|
26.3%
|
41.9%
|
50.6%
|
純利益率
|
14.7%
|
22.8%
|
31.0%
|
(注)グラフはPDFファイル・バージョンに記載しています。
セグメント情報でも見ましたが、本業をぐんぐん伸ばしているからこその、急成長なんですね。 直前期との比較が、もはや比較になりません。
スゴイなと思うのは、売上規模が拡大するのに歩調をあわせるかのように、利益率も 上昇を続けているということ。
経営者は有言実行の人のようですネ。
<B/Sを読み解く> さて次は、B/S(貸借対照表)を眺めて資産の内容を把握しておきましょう。
何が多いかって現金預金です。その額103億円。 流動資産の合計が273億円と、資産総額の93%を占めます。
流動資産を流動負債で割って求められる「流動比率」は538%と、これまたものすごい水準。 ただ、流動資産の中にある営業投資有価証券(&有価証券)に要注目です。
これは匿名組合に対する持分相当額を意味します。 会社が組成した不動産ファンドに自ら出資しており、その持分がここに表されているんです。
営業有価証券が80億円と、有価証券が25億円で、総額105億円。
たしかに、運用会社自身が出資しているファンドであれば、他の投資家も比較的安心して、 というか信頼感とともに出資できるかもしれません。
会社が組成する不動産ファンドへの信頼感を対外的にアピールすることができるし、 その上うまくいったらなお良し、と。 なるほど。
他に目立つのは、たな卸資産(22億円)と営業貸付金(20億円)。 単独のB/Sに附属する明細書を見るに、たな卸資産とは主に販売用不動産と見てよさそう。 営業貸付金は、M&A事業の一環としての資金支援かしら。
負債の内容も見てみました。 長短借入金が負債の大部分を占めています。
H17/2期は特に、長期借入金を大きく増やしていますね。 金利費用はそれに伴って増加しているけれども、それ以上に売上規模を増やしてきて、 収益力を文字通りテコ入れできている。
財務のレバレッジを効かせてきましたね〜。
<C/F 〜営業CFのマイナスについて〜> ところで、もっとも気になるのは、営業キャッシュ・フロー(CF)が大きくマイナスである点です。 キャッシュ・フロー計算書(C/F)を眺めるに、営業投資有価証券の増加が主な要因。 それ以外には、たな卸資産の増加、営業貸付金の増加があります。
これらの結果として、H17/2期の営業CFは、104億円のマイナスになっています。
これはつまり・・・ 自ら組成した不動産ファンドへの出資⇒営業投資有価証券、有価証券の純増、92億円。 さらに、たな卸資産の純増20億円(おそらく販売用不動産の取得)。 営業貸付金の純増20億円(投資先への資金支援?)。
これらの純増額に近い額のキャッシュ・アウトがあったと推測できます。
大きく利益が出ているにもかかわらず、営業CFがマイナスとなっていると、一瞬、「あれれ??」 なんて少々うろたえてしまいますよね。
ただ、B/Sの内容とその推移、C/Fの内訳を見るに、積極的に事業展開を進めているが ゆえの営業CFのマイナスと見ていいんじゃないかと。
これだけアクティブにビジネスを進めていると、当然、それに見合った資金の手当が必要となります。 それが財務CFに現れており、その内訳を見るに、長期借入金の純増が63億円、社債の発行が 45億円、そして株式の発行が48億円と、多額の資金調達を行っていることがわかりますね。
<とりあえずの結論> これまでの実績からいって、アセット・マネジャーズを率いる経営陣、「頼りがいのある経営者」 といっていいじゃないでしょうか。
頼れる経営者と高い成長率。 その上、高い利益率に良好な財政状態、&攻撃的な財務戦略(笑)。
これでは、株価に上がるなといっても無理な話。 これまでの業績を見るに、正直、魅力的な会社です。
ところで、現時点での株価は、2005年5月6日の終値で520,000円。 PERは日経金融新聞ベースで37.4倍。
市場の大きな期待を反映した株価となっているのでしょうね。 会社のビジネス力、今後の成長力をどのように見込むか、これが投資家としての 目利き力です。
将来性をどう考えるかは株主になろうとする人が判断するほかありません。 ただ、少なくとも現時点の株価としては、「非常に安い」といえるレベルにはありませんね。 あくまで個人的な見解ではありますけれど。
それに、事業の専門性の高さからいって、玄人好みの会社(銘柄)なのかなと。
ビジネスを深く理解できて初めて、本当の意味での投資となります。 いうなれば、投資家個々人にとって、ふさわしい投資対象としての企業がある、 ということなんでしょうね。
今回は歴代最長の分析レポートとなりました。(難産になるわけですわ・・・) なにはともあれ、最後まで読んでくれてどうもありがとう。
あなたの感想とか、お聞かせくださると、とても嬉しいです。 何よりやる気が湧きます!
また、分析リクエストもお待ちしてます。あなたの着眼点(コメント)と一緒にどうぞ。 <会社分析リクエスト 受付フォーム>
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では、次回の分析レポートでお会いしましょう。
(ばへっと) 2005.5.9
Presented by
楽しい投資研究所
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