こんばんは。ばへっとですよ。 さてお待ちかねの会社分析レポート、今回は、積和不動産を取り上げます。 以前から根強い人気があったこの会社、以前、ばへっとが軽く分析して 某BBSに投稿したこともあったけど、今回のは大幅加筆の改訂版です。 とりあえず、積和不動産の連結財務諸表から見てみましたよ。 まずは実績からね。 (単位:百万円) ![]() H16/1期のROEは18.9%、株主資本比率は33.8% 悪くないね。売上も上り調子。 株主資本比率が3割台なのは、140億の預り敷金・保証金があるというのが大きい。 これだけで株主資本を上回ってる。 要するに、積和不動産を単独で見てみると、 これはけっこう良さそうじゃない? 何て思えてしまうわけ。 ひょっとして割安放置銘柄? 実際、ばへっともちょっと胸がときめきました。 ところがそうカンタンな話でもなかったんだよね…… まず資本関係から見てみましょうか。 上から眺めるとこんな感じ。 積水化学 ↓21.43% 積水ハウス ↓57.47% 積和不動産 矢印の横の数字は持分比率ね。 つまり積和不動産、積水ハウスによって過半数の持分を握られているということ。 子会社なんだね。 上場はしているんだけれど、子会社。 過半数の持分を握る積水ハウスが、この会社を支配しているというわけ。 ちなみに積水ハウスも、もともとは積水化学の子会社だった。 ところが積水ハウスを上場させたところ、増資を何度か繰り返して、 いつのまにか親会社である積水化学の支配が及ばなくなり、子が親のいうことを 聞かなくなっちゃった。 もとは積水化学の住宅事業部門が積水ハウスだったんだけれど、いつの間にか 親離れされたものだから、積水化学はまた独自に住宅事業をイチからやり直す羽目に…… なんてという、ちょっとおもしろいエピソードもあったりする。 それはともかく、要注意なのは、積和不動産が積水ハウスの支配下にあるってことね。 積水ハウスグループの事業構造を見てみると、こんな感じ。 親(積水ハウス)の事業:建物の設計、施工、請負などの建設業 子(積和不動産)の事業:不動産賃貸、仲介、販売 孫(積和管理):建物リフォーム、営繕、土地建物管理 孫(MAST賃貸センター):賃貸物件の仲介、斡旋、集金管理 これ以外にも積和不動産の兄弟会社がけっこうある。 企業グループとして、これをこまかく把握するのは正直、骨が折れるわね。 まあ、これらをひっくるめて、”積水ハウスグループ”と考えるよ。 企業グループの一員として積和不動産はどんなビジネスを営んでいるのか? この辺は、積和不動産の有報、「事業の内容」に詳しく載ってる。 ビジネス・スキームを図示するとこうね。(←クリック!)(H16/1期の有報より) 「事業の種類別セグメント情報」から、収益の約95%、営業利益の約94%を 不動産賃貸業から稼ぎ出していることが分かったよ。 具体的には、積水ハウスが建てたアパート・マンションを、オーナーから借り上げたり、 積水ハウスから仕入れたりして、外部へ賃貸している。 これが積和不動産のメイン・ビジネスということ。 これ以外にも、積水ハウスから建物を仕入れて販売もしているけど、 全体に占める割合はごくわずか。 とにかく、積水ハウスとは切っても切れないビジネスの仕組みになっているんだよね。 最大の取引先が、親会社である積水ハウス。 だからこそ、積和不動産を単独で評価しようとすると、現実を見誤ることになる。 少なくとも、積水ハウスを含めた事業の構造を理解して、そのビジネス全体の 将来性を評価しなければならないということ。 その上でなお、親会社である積水ハウスが、子会社の積和不動産に対して どのような影響力を行使してくるか。 投資家は本来、そういうこともひっくるめて考える必要がある。 複雑だよね。 とにかく投資する側としては、この複雑さを知るということが、何よりも大事なんだと ばへっとは考えるよ。 さて、この企業グループとしては、積水ハウスの商品力、技術力に自信があるみたいね。 積水ハウスに家を建ててもらった方います?(笑) こういう肌で感じる商品・サービスの質って大事だよね。 それはさておいても、積水ハウスの、世に評価される技術力、ブランド力を維持できて 初めて、積和不動産のビジネスも安泰でいられる。 逆にいえば、事業の根幹の部分を、親会社に依存してしまっているといえなくもない。 というわけで、積水ハウスグループ全体の業績に焦点を当てる必要が出てきたね。 これを評価するには、とりあえず、積水ハウスが作成する連結財務諸表を見るのが てっとり早い。 直近の業績をグラフで表してみると、こんな感じ。 (単位:百万円) ![]() H16/1期のROEは5.8%、株主資本比率は56.6%。 積和不動産単体と比べてみるとどうかな? 経営的には楽じゃないことが見て取れるよね。 積和不動産は親孝行な子どもか、 もしくは、「親に甘やかされてる温室育ちのお坊ちゃん」なのかもしれない。 ちょっと厳しすぎるかな? で、いよいよ核心となるのがこのテーマ。 いわゆる子会社上場。 とにかく問題だなーと思うのが、積和不動産に投資するふつーの株主。 こういう人たちを、支配株主(親会社)に対して少数株主というんだけれど、 いくらパブリックな企業とはいえ、やっぱり支配権を握っている親会社の意向には 逆らえないんだよね。 こうなってくると、極端な話、親会社からの理不尽な要求があったとして、 それを拒否することはできないことになる。 たとえば、賃貸マンションの建築工事代金を高く設定するとかして、利益が 積和不動産から積水ハウスに流れるようなことだってできないわけじゃない。 あくまで極端な話だけれどもね。 これが子会社上場を、子会社の少数株主から見た場合の問題点なんだけれども、 こういう会社の株主にとって、最大のリスク要因は、「親会社」ということになる。 か弱い一般の株主は、いくら会社のビジネスを評価しようとも、親の意向ひとつに 振り回されてしまいかねないというわけ。 こういったことが、一見優れた会社に見えても、他社に支配される会社の場合、 株価もなかなか高値が付かない要因なのかもしれないね。 さて積和不動産、2004/09/09終値は1,220円。 日経金融新聞ベースの予想PERは26.1倍。 安くはないかな。ばへっと的に。 それにしても子会社上場、深いテーマだね。 勉強になりましたよ。特に今回は。 みなさん目のつけどころがよろしいようで…… では、会社分析はまだまだ受け付けていますよ。 (⇒こちらからどうぞ) 次回の分析レポートをお楽しみに。 チャオ! (追伸) あと、ちょっとだけ分析リクエストのルールを変更しますね。 複数の着眼点を持っていても、同一企業への重複投票は、最大3つということで……。 よろしくね。 |
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