さて、読んでみましたよ生化学工業。
この会社も、自社HPで有価証券報告書をアップしてくれてました。 いいねえ、こういう会社。 へたにIRのイベントを行うよりも、こういうところでしっかり対応 している会社の方が、ばへっと的には好きですよ。第一印象、良。
んでは、いつもどおりに実績から入ります。
直近のH16/3期は…… ROE:
5.0% 自己資本比率:
90.4%
じ、自己資本比率90.4%??!
いやたまげました。ちょっとない数字ですよねコレ。
上場したてのベンチャー企業と見まがうばかりの高水準。 貸借対照表(B/S)の資本の部を見てみると、自己資本の大部分は 利益剰余金(339億円)であることが分かる。
つまり、過去に積み重ねてきた利益が積み上がって、これだけの 厚みになっているんだね。 これだけ厚いと、当然のように有利子負債はゼロ。いやはやスゴイ。
機械的に「自己資本比率から見た安定性」といった観点からは、 磐石って感じですね。
けどね、ばへっとは手放しでは喜べないわけ。 なぜならROE(自己資本利益率)が、過去の実績から見ても5%前後 の水準をいったりきたりしている。
グラフにすると、こんな感じ(↓)。 (単位:百万円)

利益を出しているのはいいのだけれど、資本効率といった点から見ると 決して高い水準とはいえない。
売上高は前期レベルを維持。しかし粗利率は上昇傾向。 経営陣の経営努力は、その結果から見て取れるよね。
しかしというか、だからこそ、ROEは向上しない。 要するに、利益が積み重ねられて自己資本の額が増加しているから こそ、ROEの水準がどうしても低くなってしまうんだよね。
ROE=当期純利益/期中平均自己資本
なわけだから、分母の増加に比べて利益も増加していかない限り、 ROEの水準は維持できない。
もしばへっとが株主だとしたら、経営者さんには資本の効率的な 運用をお願いしたいなと思うわけ。
会社を経営するうえで、資金的に問題がないのなら、余剰資金は 株主に返してくれると嬉しい。 配当とか、自社株買いといったやり方があるわけだし。
そうすれば株主の側で、また別途、運用先を工夫することができる。
まあ、経営者サイドからすれば、潤沢な資金は経営の安定に直結する わけだから、その状態を維持したいという気持ちもわからないではない。
とくに医薬品事業を営む会社の場合、毎年出て行く研究開発費は、 実に莫大な額になる。
この会社の場合も、H16/3期は48億円の研究開発費を計上している。 その規模たるや、対売上比23%にものぼるわけだから。
じゃあ、これだけ豊富な資金を、会社はどのように運用しているのか? B/Sを見れば一目瞭然なんだけれど、巨額の「投資有価証券」が 目に付くよ。その額およそ166億円。
それとは別に、たぶん1年以内に償還される社債なんかだろうけれど、 「有価証券」は約33億円。 あわせて約199億円が、有価証券への投資として運用されている。 連結ベースのこの数字、親会社単体での”有価証券への投資勘定”と ほぼ等しいことから、その内容は、親会社の有価証券明細から見て取れるよ。
会社の投資資産ポートフォリオとしては、債券がダントツの124億円 (単体ベース)。 中身はフォードモーター系とか、ソロモン・スミス・バーニー、 IBMといった、世界的優良企業の社債が大きいみたい。
要するに、株主から運用を委託された資金を、会社が株主に代わって、 債券や株式に投資してくれているという構図になってる。
会社のビジネスそのものは、粗利率が68%というところからして かなりいい。 正直、魅力的だなと思う。
けれど、株主の側から見たら、資本の適正水準について、もう少し 考えてほしいと思うかな。もし、ばへっとが株主だったとしたらの話ね。
あと、ついでに損益計算書(P/L)も見てみたよ。
H16/3期は棚卸資産の廃棄損が3.7億円ありました。 カナダでBSEが発生したことを受けて、カナダ産ウシなんかに由来 する原材料を廃棄処分したっぽい。 タイヘンだなー。ヒトゴトながら(笑)。
あ、もちろんグッド・ニュースもあるよ。
会社の主力製品である関節機能改善剤。アメリカでは「スパルツ」として 販売されている。 この製品、アメリカの高齢者向け公的医療保険”メディケア”が適用 されているため、アメリカでのシェアが拡大中だってさ。
経営陣も、「アメリカが成長のカギ」と見ている様子。 この辺は会社四季報にも載ってる情報ではあるけれどもね。
ちなみに主力の関節機能改善剤、その年商は108億円と、これだけで 連結売上全体の半分以上を占めている。
稼ぎ頭なのはけっこうなんだけれども、できれば収益の柱はいくつかに 分散されている方が、経営の安定性という意味では望ましい。 だから今後は、他製品の成長にも期待したいところだね。
で、肝心の株価は、2004/8/29終値で1,126円。 予想PERは、15.7倍(日経金融新聞ベース)。 まあ……ぼちぼちって感じですかね。
とりあえず、こんなところかな。 今回はけっこう、難産だったね。ばへっと的に。
けれど、いつもいろいろ分析する都度、メイン・テーマが見つかって 嬉しいね。 これからもがんばるよ。
んじゃ、次のリクエストお待ちしてます。 またね。
ばへっと Aug. 30, 2004
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