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特製!会社分析レポート 03

4548 生化学工業 編 (2004.8.31 作成)

さて、読んでみましたよ生化学工業。

この会社も、自社HPで有価証券報告書をアップしてくれてました。
いいねえ、こういう会社。
へたにIRのイベントを行うよりも、こういうところでしっかり対応
している会社の方が、ばへっと的には好きですよ。第一印象、良。

んでは、いつもどおりに実績から入ります。

直近のH16/3期は……
ROE: 5.0%
自己資本比率: 90.4%

じ、自己資本比率90.4%??!

いやたまげました。ちょっとない数字ですよねコレ。

上場したてのベンチャー企業と見まがうばかりの高水準。
貸借対照表(B/S)の資本の部を見てみると、自己資本の大部分は
利益剰余金(339億円)であることが分かる。

つまり、過去に積み重ねてきた利益が積み上がって、これだけの
厚みになっているんだね。
これだけ厚いと、当然のように有利子負債はゼロ。いやはやスゴイ。

機械的に「自己資本比率から見た安定性」といった観点からは、
磐石って感じですね。

けどね、ばへっとは手放しでは喜べないわけ。
なぜならROE(自己資本利益率)が、過去の実績から見ても5%前後
の水準をいったりきたりしている。

グラフにすると、こんな感じ(↓)。
(単位:百万円)


利益を出しているのはいいのだけれど、資本効率といった点から見ると
決して高い水準とはいえない。

売上高は前期レベルを維持。しかし粗利率は上昇傾向。
経営陣の経営努力は、その結果から見て取れるよね。

しかしというか、だからこそ、ROEは向上しない。
要するに、利益が積み重ねられて自己資本の額が増加しているから
こそ、ROEの水準がどうしても低くなってしまうんだよね。

ROE=当期純利益/期中平均自己資本

なわけだから、分母の増加に比べて利益も増加していかない限り、
ROEの水準は維持できない。

もしばへっとが株主だとしたら、経営者さんには資本の効率的な
運用をお願いしたいなと思うわけ。

会社を経営するうえで、資金的に問題がないのなら、余剰資金は
株主に返してくれると嬉しい。
配当とか、自社株買いといったやり方があるわけだし。

そうすれば株主の側で、また別途、運用先を工夫することができる。

まあ、経営者サイドからすれば、潤沢な資金は経営の安定に直結する
わけだから、その状態を維持したいという気持ちもわからないではない。

とくに医薬品事業を営む会社の場合、毎年出て行く研究開発費は、
実に莫大な額になる。

この会社の場合も、H16/3期は48億円の研究開発費を計上している。
その規模たるや、対売上比23%にものぼるわけだから。

じゃあ、これだけ豊富な資金を、会社はどのように運用しているのか?
B/Sを見れば一目瞭然なんだけれど、巨額の「投資有価証券」が
目に付くよ。その額およそ166億円。

それとは別に、たぶん1年以内に償還される社債なんかだろうけれど、
「有価証券」は約33億円。
あわせて約199億円が、有価証券への投資として運用されている。
連結ベースのこの数字、親会社単体での”有価証券への投資勘定”と
ほぼ等しいことから、その内容は、親会社の有価証券明細から見て取れるよ。

会社の投資資産ポートフォリオとしては、債券がダントツの124億円
(単体ベース)。
中身はフォードモーター系とか、ソロモン・スミス・バーニー、
IBMといった、世界的優良企業の社債が大きいみたい。

要するに、株主から運用を委託された資金を、会社が株主に代わって、
債券や株式に投資してくれているという構図になってる。

会社のビジネスそのものは、粗利率が68%というところからして
かなりいい。
正直、魅力的だなと思う。

けれど、株主の側から見たら、資本の適正水準について、もう少し
考えてほしいと思うかな。もし、ばへっとが株主だったとしたらの話ね。

あと、ついでに損益計算書(P/L)も見てみたよ。

H16/3期は棚卸資産の廃棄損が3.7億円ありました。
カナダでBSEが発生したことを受けて、カナダ産ウシなんかに由来
する原材料を廃棄処分したっぽい。
タイヘンだなー。ヒトゴトながら(笑)。

あ、もちろんグッド・ニュースもあるよ。

会社の主力製品である関節機能改善剤。アメリカでは「スパルツ」として
販売されている。
この製品、アメリカの高齢者向け公的医療保険”メディケア”が適用
されているため、アメリカでのシェアが拡大中だってさ。

経営陣も、「アメリカが成長のカギ」と見ている様子。
この辺は会社四季報にも載ってる情報ではあるけれどもね。

ちなみに主力の関節機能改善剤、その年商は108億円と、これだけで
連結売上全体の半分以上を占めている。

稼ぎ頭なのはけっこうなんだけれども、できれば収益の柱はいくつかに
分散されている方が、経営の安定性という意味では望ましい。
だから今後は、他製品の成長にも期待したいところだね。

で、肝心の株価は、2004/8/29終値で1,126円。
予想PERは、15.7倍(日経金融新聞ベース)。
まあ……ぼちぼちって感じですかね。

とりあえず、こんなところかな。
今回はけっこう、難産だったね。ばへっと的に。

けれど、いつもいろいろ分析する都度、メイン・テーマが見つかって
嬉しいね。
これからもがんばるよ。

んじゃ、次のリクエストお待ちしてます。
またね。


ばへっと
Aug. 30, 2004


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